TENGAい孤独

―ほっといてくれよぉ!!


ごみが散乱する六畳間に断末魔の叫び声が響いた。部屋の中央に鎮座する、座敷わらしと思しき中年を無理やり抱え上げようとした瞬間である。


幸運を呼ぶわらし、と持て囃された当時の面影はもうない。年を経るごとに訪問客は減り続け、幼いわらしへと流れて行った。気づけば頭は禿げあがり、西日を照り返す顔面は放火魔が喜びそうなほど油ギッシュ、せり出したお腹はTシャツをめくり上げている。玩具やぬいぐるみ、お菓子で溢れていた空間は、所々にTENGAやエロ本、TENGAが積み上げられ、パルテノン神殿の景観である。足元は種々のごみで埋めつくされ、廊下よりも一段高い。


座敷油まみれ中年は、旅館『清風荘』の女将の手を振りほどき、卵が置かれたパイプ組みのピラミッドの中に鎮座した。さんさんと降り注ぐピラミッドパワーを浴びながら、新手の美容法を見つけたセレブのように頭からサラダ油を浴び、孵化するかどうかも分からない卵を抱いて温めることが、今の彼の日常である。


中年は、説得する女将を尻目に卵を温め続ける。彼にとってはそれが未来への希望であり、生きることである。座敷わらしとして用済みとなり、生きる意味を失った心の穴を埋めたのが卵であった。はかなくも、彼には感じ取れる鼓動こそが、彼が生きている証でもあるのだ。何より、以前よりも胸毛が生えてきているし、黙々と温めることは自分に向いているし、これで食っていこうとさえ思っている。だが、昼夜を問わず油まみれで卵を温める、狂ったような無職がいたのでは、旅館の経営は成り立たない。


土足で部屋に入ってきた料理長はパイプを薙ぎ払い、
TENGAを薙ぎ倒し、亀になり卵を抱く中年を抱え上げた。有無を言わせず羽交い絞めにした隙に、女将が落ちた卵へと手を伸ばす。中年は必死の形相で振り払おうとするが、女将の愛人でもある料理長はびくともしない。必死の形相だけが左右に激しく揺れ、聖水と呼ぶべきか呼ばざるべきか、汗と油とよだれが混じった聖水が辺りに飛び散り、『月刊ムーUMA特集号』に降りかかる。なんとか卵を抱え上げた女将は、TENGAに足を取られながらも階下の中庭が望める窓へと辿り着くと、汚れたパンツを捨てるように卵を放り投げた。


女将の動線を追った先で、幼なじみと目が合った。
中年の脳裏に、わらしだった頃の遠い記憶がよみがえる。一部始終を見ていた放火魔は、一度頷いて中年の顔に火を点けた。大女将の無駄に発音の良いHappy Birthdayの歌声が聞こえる。わらしは一度はにかんで、フーッと勢い良く火を消した。

だっ・・・日本代表インタビュー

アディショナルタイムでの失点でした。

「ずっと我慢の時間帯が続いていて、上手く守れてはいたんですけど、もう少しでっていうところで一瞬の油断と言うか、気の緩みが出て、、、。そこからはもう、みんな我慢の限界と言うか、しきれなくなってタガが外れたようにうんこを漏らしてましたね、、、。」

―ブラジルとの力の差は感じましたか?

「僕らの仕掛けが通用している部分もありましたし、こういう結果でも胸を張ってもいい部分はあったと思うんこですけど、一人でも漏らしそうなら逃さずに全員で突いてくる勝負への嗅覚とか、フィジカル、ドーピング(アロンアルファ)してるんじゃないかってぐらい括約筋の筋量に差は感じました。」

―途中出場でキレのある尻技からPK獲得、自らゴールも突き刺しました。個人としては手応えがあったのでは?

「監督含めて全員漏らしてますから、勝ちに結び付けられなかった時点で満足はできないです。ゴールを突き刺しても、ケチャップドバドバとはいかなかったんで。」

―監督からはどういった指示がありましたか?

「私はもう駄目だ(首を横に振って)、ピッチでは自由にやれと。緊迫した場面だったので、監督にも多少の焦りがあったのかもしれません。アップをしている時に、僕の座っていたベンチに監督が鼻を近づけていたので、すでに僕が漏らしている事に勘づいたんでしょう。単純に嗅ぎたかったのもあると思いますが。」

―チームの皆には何と?

「ギリギリまで我慢しろ、だっぷんだ感が違うからと伝えました。」

ー戦前、チーム内で肛門と呼ぶのかアナルと呼ぶのかで意見の対立があったようですが。

「みんな勝つ為に真剣ですから。あくまで理想とする自分達の肛門を貫くのか、現実的なアナルを貫くのか。監督からはフランス語で“Ketsumedo”が良いんじゃないかという意見もありましたし。今回は多数尻で海外組の言うアナルになりました。」

―今後に向けて改善すべき点はどこでしょうか?

「監督が僕にしたようなアピールだったり、最悪他人になすりつけるようなズル賢さが必要ですね。漏らしていても知らんぷりするぐらいエゴイストになってもいいのかなって。大事なのはメンタル、紙ヤスリで拭くぐらいハングリーにならないと。」

―次戦へ向けての意気込みをお願いします。

「言い訳に聞こえるかもしれませんが、漏らしはしましたけど快便でした。今日の結果は残念ですけど、水に流してまた踏ん張ります。」

松崎シゲヲ

―氏ね!

日焼けサロンの黒ギャル店員は、私の顔を見るなりそう声をかけてきた。どうやら、私を敵国のスパイだと疑っているようだ。それならば仕方がない。
私は即座に

―ス~スコスコ ス~

と返答した。彼女は一瞬、戸惑いの表情を見せたが即座に意味を理解し、プロの顔に戻った。

―いらっしゃいませ!ご予約の、松崎シゲヲ様ですね?

彼女はそう言うと、突然堰を切ったように泣き出した。聞けば、今まで親しい友人どころか親にすら
「ス~酢コス越す~」などと言われた事がないらしい。いわゆる“ゆとり”と言うやつだ。私は怖がらせた事をひとしきり謝った後、彼女を慰めながらもむくむくと鎌首をもたげるあわよくばと言うしげるを必死に抑えた。

そんな事よりも、私には為すべき任務があるのだ。小麦色を通り越し、アソビーチクのダンジョンに迷い込み、ブラックホールを突き抜けた日焼けの向こう側、すなわち、燃え尽きて真っ白な灰となるのが我が使命である。美白である。

―今日から、私が松崎シゲヲ

黒ギャル店員が、そう呟いた。

Boy meets Girl

英樹君、亜紀子さん、結婚おめでとう!
僕の大切な友人である、お二人の末永い幸せを祈って
愛の詩を贈ります。

聞いて下さい。

『Boy meets Girl』

破れたジーパンの穴から 誰かが覗いている
破れたジーパンの穴から 誰かがこっちを見ている

誰?なんて聞くほど野暮じゃない 
君はきっとシャイガール

出会ったのは奇跡 
ほつれるほどに絡み合う運命(さだめ)

破けてるジーパンなんて捨てちまいな 
ちっぽけなプライドと一緒に

オシャレだなんて言わせないぜ 
シャイな割には尻丸出し

ずっと餓鬼のままだと思ってた 
君と出会えた かくれんぼ
尻に挟んだ きびだんご

出会った君は 桃太郎


二次会で、僕はきびだんごを無理やり食わされた。

ザ・成功者 起業家インタビュー

―山本さんは42歳で起業されたわけですけど、それまではどんなお仕事をされていたんですか?

山 起業する前は鉄道関連のベンチャー企業で、毎朝満員電車の最後に乗り込んで、扉に顔面を押しつけられる代行業務をやっていました。人の為になる仕事でやりがいもあったのですが、徐々に躁鬱気味になりまして、、、。ずっと押し付けられていると奇声を発したくなりますし、逆に押し付けられないと仕事をした気にならなくて、自分を責めてばかりいましたね、、、。そんな毎日にも疑問を感じ始めて、起業に繋がっていく訳ですけど。

―はぁ~、それはハードなお仕事ですね。でも押し付けられないのは山本さんの責任ではないですよね。混み具合にもよりますし。

山 そうなんですけど、やっぱりプロですから現場のせいにはできないんですよ。クライアント様が背後にいる場合は押し付けてくれるんでいいんですが、そうじゃない場合は押し付けられるのもテクニックですから。おしくらまんじゅうでいえば、まんじゅうにならないと。

―なるほど~、勉強になります。起業されたのは前職での経験が大きかったんですか?

山 そうですね。「俺は何をやってるんだろう」という思いが日に日に強くなって退職しました。当時は精神的にどん底で、毎日念力によるスプーン曲げの練習をしていましたね。エスパーになったら何でも叶えられるんじゃないかって。

―壮絶ですね~。そんな状態からどうやって起業するまでに立ち直ったんですか?

山 やっぱり、妻と子供の顔が浮かびましたね。いないんですけど。こいつらを路頭に迷わすわけにはいかないって、火が付きましたね。

―すごい!愛の力ですね!

山 そうですね。支えてくれた妻と子供達には感謝しています。いないんですけど。それからは真剣に自分と向き合って、スプーン曲げに没頭できましたね。

―起業家として生きていく、大きな転機になったんですね。

山 今にして思えば(笑)、ですけどね。そんな生活もすぐに匙を投げまして、実家に戻りました。

―その生活を捨てるなんて、相当な覚悟ですね。

山 一度きりの人生、チャレンジですから。ちょうどタイミングも良かったんですよ。タケノコが生えてくると同時に変態も出没する季節で、会社を興すには絶好のタイミングだなって。

―まさに裸一貫でのチャレンジですね。不安はなかったんですか?

山 もちろん、背徳感はありましたよ。それよりも、人生を思い返した時に後悔したくないなって。

―やらずに後悔するより、やって後悔した方がいいですよね。

山 迷っている間におじいちゃんですよ。今朝も鏡を見たら、見知らぬ中年が立っていましたから。大人なので会釈はしましたけど、本当に怖いですよ。

―では最後に、起業したいという人達に何かアドバイスやメッセージがあればお願いします。

山 あなたは一体、誰なんですか?

ーー鏡は何も答えない。